 |
| |
|
第3回 「立山」はどのように形容されているか |
| |
前回は校歌の中に「立山」がどのくらいの数歌われているかをエリア別に見てみましたが、じゃあ一体「立山」はどのように形容されているか見てみます。
歌われている形容は
たかくそびゆる立山の 雄々しき姿仰ぎつつ ・・・
そそりたつ 高き立山かがみとし 朝夕学ばん ・・・
あさひに映える立山の おおしいすがた仰ぎ見て ・・・ と、まさしく各校様々です。
形容をランキングしてみると、 なんと!「仰ぐ」という形容は約1/3もありました。
|
| 1位 |
仰ぐ |
54校 (34.6%) |
| 2位 |
雪 |
39校 (25.0%) |
| 3位 |
朝・朝日 |
38校 (24.4%) |
| 4位 |
光 |
37校 (23.7%) |
| 5位 |
高い |
23校 (14.7%) |
|
2位以下の「雪」は、「白雪・千古の雪」、「朝・朝日」は、「朝夕・朝影」等としても歌われています。
「高い」は日本有数の高山ということで納得なのですが、「光」に関しては「光を放ち・清い光」と何かとても「神秘的」なものを感じます。
「仰ぐ」や「光」。この「神秘的」な表現とは? と考えているうちにその背景に「立山信仰」や「万葉集」などが見え隠れしてきます。
|
|
「立山」が歌われている学校156校中の形容のランキング
|
|
「立山信仰」とは立山にかかわる山岳信仰全般を総称したものです。また、古く「万葉集」にもこの「立山信仰」にまつわる詩が詠まれています。
万葉歌人の大伴家持が詠んだ「立山賦」です。
天離(あまざか)る鄙(ひな)に名かす 越の中
国内(くぬち)ことごと 山はしも しじにあれども 川はしも
さはに行けども 皇神(すめがみ)の 領(うしは)きいます
新川(にいかわ)の その立山に・・・(巻17-4000 大伴家持)
<訳>
地方の国で名高い、越中の国じゅうに、山はかずかずあるけれども、川はたくさん流れているけれども、
土地の神様が支配していらっしゃいます、新川郡のあの立山に・・・。
|
このように、「立山」は古来から尊崇、遥拝されてきた山岳信仰の山なんです。
校歌の中には、ただ単に美しい山「立山」としてとらえているものの他に「立山信仰」にまつわる「神秘的」なものを感じ取ることができます。そしてそれは、精神的な面への訴えかけになっているようです。
そこで、様々な形容を「立山」をお手本や目標として、「あの山のようになろうよ!」という「精神的価値」と 雄大な美しい自然を表現する「自然の賛美」とに分けて調べてみることにしました。
|
| |
|
精神的価値
|
天かける、鑑(かがみ)とし、父、千古にかおる
|
|
千歳ゆるがぬ、千代にかわらぬ、天にゆるがぬ、永遠、永久(とこしえ)
|
|
霊気を浴びて、秀麗の気、清新の気、屹然、放つ光
|
|
心のすがた、ちりにそまらぬ姿、尊き姿、気高い姿、ゆるがぬ姿
|
|
心の虹、理想、希望、意気はもえ
|
|
はるか、ほがらか、清らけく、さわやか
|
|
教えみちびく、たゆみなく、仰ぎ見る、おごそか
|
|
自然のさとし、無言、万葉の枕詞、紫匂う
|
|
自然の賛美
|
自 然
|
朝(朝(あした)、朝日、朝夕、朝影、朝空、朝あけ、朝光(あさかげ))
|
|
光(清い光、光あふれ、金光)
|
|
雪(白雪、千古の雪、雪にかがやく、白銀、しろがね、ま白、銀嶺)
|
|
雲(雲わく、雲海、雲に秀いづる、雲おしわけて、雲井に仰ぐ)
|
|
日(日いずる、日のぼる、日光(ひかげ)、陽に映えて、照り映える)
|
|
空(空に連なる、空をつく、青空、晴れる)
|
|
立山おろし、山肌光る、山ふところ、東(ひんがし)
|
|
形
|
雄々しい、そそり立つ、天そそり立つ、直く、堅き、動きなき、高き、聳える、雄姿、力、座す)
|
|
映える、清らな姿、清き姿、秀でて高い、高嶺、秀麗、かがよう(輝く)、嶺のいらかは苔むして
|
|
|
精神的価値
|
|
| |
この分類の中では「立山」を精神の規範として、つまり「立山」をお手本や目標とする様々な形容がみられます。
上記の形容ランキング1位の「仰ぐ」という語句をもう一度見てみましょう。
「仰ぐ」とは、[1.上を向く。 2.尊敬する。うやまう。 3.長上としていただく 4.教えや命令・援助などを請う、求める。 5.上を向いて飲む。一気に飲む。](広辞苑)という意味がありますが、
ここでは、高い山を見上げるの1. 信仰や精神・倫理規範として2.3.4.があてはまると思われます。
でも、地図で見ると「仰ぐ」って感じじゃないですよね・・・。
ヒントは、「立山信仰」にまつわる古絵図「立山曼荼羅」にありました。
「立山曼荼羅」とは、立山の山岳宗教に関する絵画史料で、越中(富山県)の絵図のことです。
【参考】富山県 立山博物館 http://www.freeweb.gr.jp/~hello/tateyama/yama/museum/index.htm
|
 |
 |
| 古絵図「立山曼荼羅」の富山県地図
|
現在の一般的な富山県地図
|
|
|
現在の地図と比べると、古絵図「立山曼荼羅」の富山県地図は全く反対! 「立山」が上で富山湾が下にあります。
なるほど納得! これなら「立山」を「仰ぎ見る」格好になってますよね。
また、「立山」に登ることを「登拝(とうはい)」とも言ったようです。
更にランキング4位の「光」。
自然を賛美している「白雪光る立山連峰・・・」という表現もありますが、「立山の放つ光がさすところ・・・」「遠ひかる立山仰ぎ・・・」「立山の光さやかにさしてくる・・・」
と、「神秘的」な表現、つまり信仰・霊山としての歌われ方の方がはるかに多くみられます。
「立山」はその昔、「たちやま」と呼ばれ、「顕ちやま」=
神の顕現する(はっきりと現れる、あらわし示す)山との意味があり、「立山」という山の名そのものが「神山」であることを示していたそうです。
ということは、「神」の名を校歌の中で歌うということになり、「神を仰ぐ」「神の放つ光が・・・」という意味になるってことでしょうね。
このように、「立山」の形容として、「自然の賛美」の形容よりもこの「精神的価値」の形容が圧倒的に多くみられ、大きな特徴となっています。
|
|
富山県の小学校校歌の背景には「立山信仰」がしっかりと根付いていることがわかります。
「立山」の歌われ方は、校歌によくありがちな、「山」、「川」、「海」、「平野」の中の単なる美しい「山と」しての歌われ方以上の捉え方をされており、
「神の山」としてみんなが向かうこれからを指し示し、教え導く役目をしています。そして、「目標」でもあるのです。「あの立山のように・・・」と。
|